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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

「……桔梗っ」

馬を降りた将門の声が、水へひびいた。同じ叫びを、彼は、白痴の児のように、何度も、水へむかって、繰り返した。

「き、き……桔梗……」

やがては、ただ咽び、ただ涙となり、そして、おろおろと、あたりを、行き暮れたように、歩き廻って、突然――

「おれだぞ。将門だ。……桔梗よ」

と、水の中へ、ざぶざぶ、這入って行こうとした。

すでに、後から駈けて来た面々も、そこらの地上を、物色したり、そして、芦間に、血に染みて、沈みかけている破れ船を見つけたりして、地だんだを踏んで、呪いや不覚を、口走っていたのである。

「あっ。どこへ。……お館様、どこへ」

将門の異様な行動を見て、郎党のひとりが、抱きとめた。将武も走りよって、手をつかまえた。

「離せっ、おいっ。……離さぬか」

将門は、恐ろしい力で、二人を刎ねとばした。

将武は、足に、しがみついて、

「あ、あぶのうございます。兄者人っ、あの船には、誰も、おりません。桔梗さまも、誰も……」

「いる。……いる……。おれには、見える。……桔梗が、和子が」

「おういっ。み、みんな、ここへ来てくれ」

と、将武は絶叫した。

「――兄者人が、発狂なされた。