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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

とにかく、彼は、庶民の中の庶民の友人であった、師であった。

だから、街の人々は、彼を呼ぶのに、

「市のお上人」

といって、親しんでいる。

いや、何かこの人が、自分たちの力であるように、空也が夜の辻に立つと、みな彼のまわりに集まった。そして、説教に耳をかたむけ、念仏を唱和し、やがて誰ともなく静かに叩く鉦の音律にあわせて、群集の輪は、市の上人のまわりを踊るが如く巡りあるいた。

空也念仏――空也踊り――

春の星が、都の空を、妖しい光に染めている。民衆の中に、こういう事象が起るときは、民衆の中に、何か、不安があるときだった。――空也踊りの輪は、念仏と鉦の音の音律は、それを語っていた。

「きょうも、西の早馬が、太政官の門へはいった」

「いや、きのうもだ」

「伊予の純友一類が、南海ばかりでなく、近頃は、つい淡路や津の海まで、荒し廻っているというぞ」

「いったい、官の追討は、何しているのであろ?」

こういう不安な囁きは、絶えず聞く。

ここ数年、中央政府は、純友一類の海賊征伐には、まったく、手をやいている。

小野維幹、紀淑人などは、いくたび宣旨をいただいて、純友一類の海賊征討に、瀬戸内海を南下して行ったか知れないが、都人はただの一度も、凱旋軍を見たことはない。