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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

「ば、馬鹿な奴等め! こんなに、骨を折って、やっと和睦のできた日に」

「馬鹿です。まったく、馬鹿者ぞろいです。――兄者人、もうこんな馬鹿者喧嘩に立ち入って、こけの踊りを見ているのはやめましょう。一兵でも損じてはつまりません」

「そうだ。もう腹も立たない」

「決して、馬鹿合戦に関うなと、私たちの郎党は、町の外へ、立ち退かせておきました。――兄者人、お帰り下さい」

将平は、あいそが尽きたように、遮二無二、兄を引っ張って、六所の森から、外へ連れ出した。

そして府中の火光と叫喚を見捨てて、夜どおし馬を急がせ、下総の領内へ向って帰ってしまった。

また。――あとの府中の方でも、その晩、一椿事が、なお加わっていた。

たしかに、椿事といっていい。

新任の武蔵介経基は、どう考えたか、任地を捨てて、この夜かぎり、都へ逃げ帰ってしまったのである。

彼は、その夜の部下同士の争いを、武芝の計った“不意討ち”とかたく思い込み、また、その武芝と将門が肚ぐろい密約をむすんで、自分たちを殺そうとした“計画”であったのだと、悪推量をまわしたのだ。

それが誤解であったことは、彼がもすこし落着いていたら、充分、すぐ翌日にも分っていたはずだが、何しろ、よほど仰天したか、慌て者だったにちがいない。