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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

「たれでもよい。はやく、儂の縛めを、解いてくれい。憚らいでもいい。入れ……早く」

と、あたふたいった。

彼は、まっ裸にされて、柱にくくしつけられていた。あちこち、蚊にくわれたあとが、おかしいほど、腫れている。こよいのみは、この大臣も、わが美味な血を、蚊の歓宴に施していたのである。

「賊を見かけたなら、壺の君が、攫われて行ったのも、見たであろう。……彼女は、どうした。彼女の身は」

「藍子さまのお行方ですか」

「なに……」と、呆れるばかり驚いた表情をして――「ど、どうして、そちは、彼女の名を、知っているのか」

「賊の頭目が、そう呼びました」

「ああ、あの悪魔めが? ……。して、そちは、斬り合ったのか」

「はい、ちょうど、今晩は、いつもより早くに目ざめ、牛に土手の草を飼っておりました。怪しと見て、追いましたところ、大勢は、藍子さまをかついで、先に、川の彼方へ渡りこえ、あとに残った賊の頭目が、こう申すのでございました」

「どういった……。どう?」

「藍子の身が、いとおしかったら、二日のうちに、砂金一袋を持って、うけとりに来い。その日が過ぎたら、女の体は、おれが自由にしていると思え。