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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁
一〇
「よくよく打ち殺されたかったんだろう」
「そうじゃない、浪江に跡を取らせたいばかりに、俺はどんなに気をもんだか知れやしない。浪江の在処さえ判れば、俺は倅を伴れて、ここを出て行く、嘘も偽りもない」
「本当か、野郎」
「浪江に悪い噂が立って、俺はどんなに心配した事だろう、小永井の家を潰しちゃ、先祖様に対して済まないから、無理な献立も、拵えたが、お前と浪江が出て来さえすれば、俺と倅は、この家に用事はない、半蔵、間違ったことをしてくれるな――」
滝三郎は真に畢生の弁舌を揮いました、正直者の半蔵は、いつの間にやらそれを信用する気になって、匕首を腹巻に納めると、ドッカと座敷の真ん中に、坐り込んでしまったものです。
一〇
その晩、半蔵はすっかり好い心持になってしまいました。駕籠を仕立てて、浪江を迎えにやらせるとヘエコラする滝三郎と文五郎を下目に見下ろして、納戸にとぐろを巻いて、平次のことも、殺されに来たことも忘れていたのです。
「半蔵さん、お風呂は?」
顔馴染の女中が、そう言って来ると、少し酔いの廻った半蔵は、フラフラと立ち上がりました。風呂と聞くと我慢の出来ない半蔵は、少し酔っていることなどは考えていません。