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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

六

若年寄方と掛合ごっこを始めちゃ鳥が飛んでしまう、構う事はねえ、外へ出たところを縛れ」

無法な奴があったもので、そのまま子分を伴れて、本郷丸山へ飛んで行きました。

旗本は勿論のこと、武家は町方の手で無闇に縛れなかったものですが、浪人となると、話が違います。高木銀次郎、武家には相違ありませんが、お主も係累もない、天涯孤独の浪人。近頃は義兄の荻野左仲のところにも居にくくなったとみえて、食い扶持だけを貰って、ツイ屋敷外の長屋に、鰥暮しの気楽さを楽んでいるのでした。

六

「相手は兵法と忍術に凝っているんだ、油断をしちゃならねえ」

「心得たよ、親分」

「腰の物を預けたら、すぐ飛込んで、口上を言うんだよ」

「ヘエ」

「腰の物は番台に居る娘が持って逃げる手筈だ、ドジを踏むな」

「合点」

大塚の重三は、十五六人の子分を伴れて、もう一刻も前から、丸山湯の路地に身を潜めております。

お紋は、謀反人の娘という自分の素姓は言いませんでしたが、高木銀次郎の怪しい事は、重三へも平次と同じように話していたのです。

「そら、来たぞ」

「シッ」

羊羹色の着流し、不精らしく懐手をして、一刀を落した浪人体の男は、大通りから入って、丸山湯の方へ差掛かったのでした。