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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁
四
「お葬式はまだかい」
と平次。
「遠い親類があるそうで、明日もむつかしかろうと言うよ。お通夜の衆に遠慮して貰って、仏様を見るか」
「いや、それには及ぶまい。左貝殻骨の下から、胸まで突き刺す手際じゃ、娘の仕事でないことは判り切っているから」
久三郎はもう一度苦い顔をしました。奥の一と間に集まったお通夜の衆は、世間体を憚って、本当の近親ばかり、平次はその中に交って、百万遍の数珠を繰ったり、線香を上げたり、神妙らしい四半刻(三十分)を過しました。それを吹き晒しの縁側から見ている信心気のないガラッ八の退屈さ――。
四
「ちょいと、親分さん」
「誰だい」
ガラッ八の八五郎は、好い心持に後ろを振り返りました。こんな調子で呼ばれるのは、あまり例のないことでもあり、それに、その声の仇っぽい美しさは、八五郎の五臓六腑に沁み渡る心持だったのです。
「茂七さんは人なんか殺せる方じゃありません。どんな事を言っても、あの人ばかりは疑わないで下さいな」
「そりゃ一体どういうわけだい」
ガラッ八は闇を透かしました。外は美しい月夜ですが、そのせいで建物の蔭になる中庭の暗さは一倍です。
「頼みましたよ、親分さん、悪者は外から入って、お神さんを殺して逃げたに違いありません、――その証拠は――」