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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

四

「あれは、お化けや狐なら驚きはしない、人間だよ、――それも若い娘の声だ」

「ヘエ――」

二人は四つん這いにならないばかり、絶対に跫音を忍ばせて、どうやらこうやら木立の外へ出ました。

海の底のような、真珠色の朧月夜。

半開の桜の下に、ハネ釣瓶が見えて、井桁の下に、何やら白いものが踞っております。

「娘だッ、親分、あれが浪江という娘ですぜ、そりゃア美しい」

「シッ」

耳元に囁くガラッ八を払い退けるように、平次はなおも四方を見廻しました。

幸い木立の尽きるところから、少し廻ると物置の裏へ入って、井戸のすぐ側まで、その庇が延びております。

二人はもう躊躇しませんでした。

四

「浪江、少しは懲りたか」

庭下駄の音がして、井戸端へ物影が射します。叔父の滝三郎が、庭木戸を開けて出て来たのでしょう。

「…………」

娘は泣き声を呑みました。

桜の間から落ちる月の光が、井桁に縛られた娘の身体を、人魚のように青白く照しております。

ここまで見届けると、平次とガラッ八は、思わず庇の影に眼を外らせました。娘の身体が白々と見えたのは着物や光線のせいではなく、半裸体にされて、犇々と荒縄に縛り上げられているためだったのです。