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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

五

「草間さんは?」

「私には茶碗が一つ、茶入れが一つ、――それっきりだ」

草間六弥の唇には、薄笑いが浮びます。

五

平次はそれから順々に家中の者に逢ってみました。番頭の才吉は、

「ヘエ――、三百両のお形見を頂くことにはなっておりますが、旦那が亡くなれば禄に離れます。この先どうしていいか、途方に暮れましたよ」

そう言って、慎み深い目を挙げました。三十五六のちょっと好い男、蔵前時代から十五六年も孫右衛門に仕えたそうで、見かけ以上に手堅そうです。

「草間さんは茶碗一つ茶入れ一つしか貰わないと言うから、三百両は少ないわけじゃあるまい」

「ヘエ――」

何やら不満らしい声です。

「何か言いたいことがあるんじゃないのか、番頭さん」

「別に、ございません、でも親分さん、あの茶碗と茶入れは主人が自慢の品で、三百両はおろか、三千両でも買えません」

「なるほど」

「こんな事を私が言ったとはおっしゃらないように願います。元が武家だけに、あの人には怖いところがございます」

「よしよし」

平次はそれ以上に追及しませんでした。

次に呼出されたのは、小僧の勘次です。

「小僧さん、先刻は御苦労」

「ヘエ――」