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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

二

「それじゃ大急ぎで飛んで行って、掛り合いの者を一人残らず集めておいてくれ。どこかへ纏めて、一人も外へ出しちゃならねえ」

「そんな事ならわけはありません」

「待て待て、糸目の切れた凧みたいな野郎だ」

「まだ話があるんで?」

「釣場の材木に血が付いているなら、洗っちゃならねえ。血がなかったら、――こうと、伊勢屋新六の供の者や近所にいた者の髪を見るがいい。男でも女でも構わねえ、髷の中が湿っているか、元結が濡れている者があったら、その場で縛り上げるんだ、解ったか」

平次の命令は細々と行届きます。

「大解りだ、親分は?」

「後からそろりそろりと行く」

「それじゃ」

ガラッ八の八五郎は、飛びました。身上も軽く気も軽い男です。強健な三歳駒のように本所へ――。

二

その頃の釣の豪勢さは、物の本に僅かにおもかげを伝えております。竪川筋の大名釣は、置材木の上に金襴の座蒲団を敷き、後ろに金屏風を立てめぐらし、金銀象眼の畳竿に、当時の名妓の生毛を釣糸とし、茶器の贅を尽し、酒食の豪華を競い、印籠から練餌を出して、盛装の腰元に付けさせ、二寸足らずのや青鱚を釣って、悦に入ったというに至っては、有閑無為の人達の贅が馬鹿馬鹿しくも気の毒になります。