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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

九

「按摩さん、火はもう消えたよ。お前さん火の用心が悪いから、七輪の側の渋団扇が燃え出したんだよ」

ガラッ八は外から入って来ました。

「ヘエ――、七輪の火なんかないはずですが」

と按摩。

「私が飛込んで消してやったよ」

「有難うございます」

按摩は面喰らって帰って行きました。

「親分、ここの話は按摩の家の物干しに居るとよく聞えますよ」

「シッ」

「それから、親分」

と声をひそめるガラッ八。

「解ったよ、按摩の家から、女が一人飛出したろう」

「よく御存じで」

「その鼠を追い出したかったんだ。それが出ないうちは証拠が揃わねえ」

平次は始めて晴れ晴れしい顔になりました。

九

中山半七郎殺しの疑いで、両国の軽業小屋から、三輪の万七が曲毬の甚三郎を挙げたのは、その翌る日の昼頃でした。

と、同時に、車坂の桔梗屋からは、娘のお藤が無事に帰って来たという知らせが、三輪の万七と銭形の平次のところへありました。

「さア分らねえ」

八五郎は長い顎をしきりに撫で廻していると、

「八――、だいぶ前の事だが、花川戸の近江屋の娘が、轟の権三という香具師に誘拐され、幽霊の見世物にされて殺されかけた事があったが、覚えているだろうな」