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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

「それが驚いたよ、親分、江戸の盛り場というものは、思いの外大したものだね」

「当り前だ」

「妓の数もあんなにあろうとは思いも寄らなかった。毎日毎日、白粉臭いのを首実検してつくづく厭になりましたよ、おしまいには嘔気いて来る」

「とんだ役得だ、――ところで、さらわれた女に一人でも出っくわしたか」

平次は冗談を言いながら膝を進めます。

「一人も居ねえ、――身を沈めた理由を聞くと、どれもこれも気を揃えて親のためだ。何だって江戸の盛り場にはあんなに親孝行が多いんだろう」

「馬鹿野郎」

「吉原から始まって、千住、新宿、品川、板橋、の四宿を始め、大根畑から金猫銀猫、いろは茶屋といった岡場所、比丘尼から夜鷹まで、八丁堀の旦那の御声掛りで、町役人立会の上虱潰しに見て廻ったが、暮から先月へかけて、本所深川でさらわれた娘などは一人も居ねえ」

ガラッ八は調子に乗って、少し仕方噺になりました。

「御苦労御苦労、大方そんな事だろうとは思ったが、一度当ってみないうちは安心がならねえ、――ところでお品さん」

「親分、家の若い者に手伝わせて、こんなものを拵えてみましたが、役に立つでしょうか」

お品は風呂敷を解くと、半紙横綴り十枚ばかりのを出して、極り悪そうに平次の前に押やります。