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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

それから、別に人をやって品川と三崎と伊豆の船番所も当ったが、女を乗せた船なんか一隻も通らねえとよ」

「ヘエ――」

昼寝どころの沙汰ではありません。たった十五日間に平次がどれだけ骨を折ったか、ガラッ八は今さら唸るばかりです。

「三十人の女は、江戸の盛り場にも売られず、上方へ送られた様子もねえとなると、どうしても江戸に居なきゃアならないはずだ、――もっとも、生きているか、死んでいるか、そこまでは解らないが――」

「親分」

お品はさすがに怯えました。

「三十人の若い女だ。生きていれば泣きも笑いもするだろう、殺されたにしても、死体のやり場があるめえ」

平次の言うのは尤もでした。江戸の真ん中で、三十の死体を、人目に触れないように処分する方法はありません。

「どうすりゃアいいんだろう、親分」

とガラッ八。

「たった一つ工夫がある、――が、これはむつかしい、命がけの仕事だ」

平次は何やら思い惑う様子です。

「親分、命がけの仕事なんざ、お茶漬ほどにも考えちゃいないこちとらじゃありませんか。八、これをこうしろ――と威勢よくやっておくんなさい」

ガラッ八の八五郎は、はみ出した膝小僧を擦りながら、上眼使いに平次の打ち沈んだ顔を睨め上げるのでした。