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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

巳刻(十時)を少し廻ると、主人の巴屋三右衛門は番頭と鳶頭を従えて、見廻りにやって来ました。五十少し前といった、デップリした恰幅で、柔和な眉、少し鋭い智恵の輝きを思わせる眼、二重顎、大町人らしい寛闊なうちにも、何となく商機に敏い人柄を思わせるのが、地味な紬を着て、ニコニコ遜った微笑を湛えながら、そっと小屋の横から、施米の忙しさや、手摺の外の群衆などを満ち足りた様子で眺めているのでした。

「あれが巴屋の旦那だよ」

「ヘエ――、道理で福相だ、大したものだね」

三升だけのお世辞を言いながら、小腰を屈めて遠くから挨拶をする者などがあります。

「旦那、銭形の平次親分が来ていますよ」

「何? 銭形?」

「あれ、向うから施米の行列を見ているのは、平次親分と子分の八五郎でございますよ」

番頭に注意されると、巴屋三右衛門は黙って点頭いて、二人を従えたまま平次の方へ近づきました。

「これは銭形の親分、御苦労様で」

「巴屋の旦那でしたか、結構な善根ですね、皆んなどんなに喜んでいることでしょう」

「いやそう言われると極りが悪い、ほんの少しばかり、私の気紛れですよ」

「毎月の事ですから、気紛れや道楽では続きゃしません、恐れ入りました」