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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁
「あッ、銭形の親分」
甚三郎は急に肌を入れると、一つピョイとお辞儀をしました。
「施米の時からお品さんをつけ廻していたようだが、昨夜どこへ伴れ込んだんだ」
平次は手厳しく、――が、事務的に言葉を進めました。
「何をおっしゃるんで、親分」
「白ばっくれちゃいけねえ、菊川町から、念入りに橋々へ銭形を書いたのは御苦労だったネ」
「私には何が何やら少しも解りませんよ」
桶甚は持前の片意地を発揮して少しムッとした様子です。
「その手を見せろ」
あっと言う隙もありません。平次はいきなり飛付くと、桶甚の右の手をグイと握りました。掌には何の異常もありません。
「手がどうかしましたか」
「見ろ、手は洗ったが、爪の間を掃除するのを忘れたろう。消炭がこんなに付いてるじゃないか、太い野郎だ」
「あっ」
飛退くと甚三郎の手には、キラリと鑿が閃きましたが、早くも飛付いた八五郎、後ろから、鑿を持つ手ごと、一流の剛力で羽交締めにしてしまいました。
「神妙にせえ」
必死と騒ぐ甚三郎は、二人の手で高手小手に縛り上げられてしまいました。
雇人は逃げ散り、女子供は、顫え上がっているので、もう二人を妨げる者もありません。