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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

仇っぽい声はそれっきり尻切蜻蛉になりました。誰か不意にやって来た人影に驚かされた様子です。

「チェッ、勝手なことを言うぜ」

ガラッ八は大きい舌鼓を一つ、クルリと元の灯の方へ顔を向けました。

「八、今のは誰だ」

「あ、親分」

いつの間にやら平次が、八五郎の後ろに立って、ニヤリとしていたのです。

「とんだ邪魔をしたようだな――たいそう仇っぽい声がしたが、あれは誰だい」

「それが解りませんよ、――何しろ中庭は真っ暗だ、――女には違いないが、新造か、年増か、綺麗か醜いかの見当も付かねえ」

「何を言ったんだ」

「茂七は人を殺すような男じゃないから、疑わないようにしてくれと言うんで、――悪者は外から入ったに相違ないとも言いましたよ」

「すると下手人はやはりこの家の者かな」

平次は裏の裏を考えていました。

「とにかく、変な女ですね。あの声を聞くと、ぼんのくぼへ飴を垂らされるような、――鼻の頭を羽毛で撫でられるような、背筋がモゾモゾするような心持になりますよ」

それ以上は二人にも解りません。

青物町の久三郎を誘って、お米が殺されたという二階も見ましたが、階段が裏表にある上、部屋が並んで四つもある有様で、曲者にとっては四通八達の間取りです。