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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁
寅刻(四時)近い頃、どこから入ったとも判らぬ男が、店中の者を一人ずつ縛り上げた上、百両ばかりの金を用箪笥から出させ、娘に猿轡を噛ませて、裏口から飛出してしまいました。あんまり手際が良いので、忍術使いか何かじゃあるまいかと申しております」
主人の喜兵衛は四十男ですが、いかにもがっかりした様子で説明してくれます。
「お藤さんの行方は?」
と平次。
「それっきり分りません。三輪の万七親分は、店中の者を一人残らず縛った手際は、捕縄を扱い馴れた者の仕業だ――とおっしゃいましたが」
「…………」
ここにも平次に対する濃厚な疑い、――さすがにはっきりは言いませんが、主人の眼には疑惑が満ちます。
「つかない事を訊くようだが、――お藤さんに親しい男でもなかったろうか」
「世間ではいろいろ噂があったようですが、取立てて親しい男があったとは存じません。もっとも、近いうちに、湯島の山崎屋専助へ嫁にやるはずで、祝言の日取まで決めておりました。金は惜しいと思いませんが、せめて娘だけでも無事に帰るように、お骨折を願います、親分さん」
聞きようによってこれは、お前の手から娘を返せとも取れます。