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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

中山半七郎は頸筋を掻きました。平次の調子が少し皮肉に聞えたのでしょう。

「俺と親方が似ているんだってね、世間の人はそう言うが――」

「ヘエ――」

「もっとも、役者に似ていれば、俺は本望だが、親方の方じゃ迷惑だろう」

「とんでもない、親分さん」

半七郎はますます恐縮してしまいました。通な人達からはの腹と言われるピカピカの一張羅、それを寝押して夜昼オッ通して着ているらしく、部屋の中の調度も、田舎芝居の小道屋のようで、何となくケバケバしく見えます。

「お前さん、桔梗屋のお藤を知っているだろうね」

「ヘエ――」

「どんな掛り合いだえ」

「以前、御ひいきになりましたが、近頃は一向お目にかかりません」

「何か、固い約束でもした事はないだろうか」

「とんでもない、芝居者と客の間で、――」

「約束はしても当てにはならないというのだろうね」

と平次。

「恐れ入ります、素人衆はツイ夢中になりますんで、ヘエ、とんだ迷惑をいたします」

鼻の下の長い白粉焦けのした男が、こんな事を言うのですから、本当にいい気なものです。

「で、今は掛り合いがないと言うんだね」

「もう三月もお目にかかりません、――近頃世間の評判では、強盗にさらわれたという話で、とんだ事でございます」