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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

三好屋の隠居は、何心なく筋書の底を割ってしまいました。

「へッ、御名指しと来やがる、お安くねえぜ、親分」

とガラッ八。

「そんな事だろうと思いましたよ、御隠居さん、話が筋になりそうだ、御供しましょう」

「行って下さるか、親分」

三好屋の隠居は有頂天でした。何か余程甘い話がありそうです。

すぐ支度に取掛かって、三人連れの無駄話に興じながら、巣鴨の屋敷に着いたのは、かれこれ未刻半刻(三時)。

藁葺の洒落た門を入って、右左に咲き過ぎた古木の梅を眺めながら、風雅な入口の槃を叩くと、

「…………」

美しい女中が現れて、行儀正しく式台に三つ指を突きます。

何だか、昼狐につままれたような心持、平次はもとより、お喋舌のガラッ八も、毒気を抜かれて黙り込んでしまいました。

「神田の三好屋が、平次親分を連れて参りました。御新造様に御取次を願います」

三好屋の隠居は茶人帽を脱いで、よく禿げた前額をツルリと撫で上げました。襟へ落ちる柔かい春の陽、梅の匂いに薫醸された和かな風、すべてが静かに、平和に、そして一脈の寂をさえ持った情景でした。

「しばらく御待ち下さいまし」

芝居の御腰元の外には見たこともないような、淑かな女中が姿を隠すと、