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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁
「…………」
「親分、そんな理不尽なことがあるでしょうか。親は謀反人でも、その娘の私になんの科がありましょう。まして勇太郎様はまだほんの三つ、あんまりお可哀相じゃありませんか」
お紋はそっと涙を拭きました。居崩れた膝を直して、下から平次を仰ぐ顔は、どう見ても三十近い大年増ではありません。
母屋の方からはガラッ八と三好屋の隠居の歌うダミ声。
「ところで御新造、幻の民五郎の話が出たようだが、あいつはどうかしましたか」
平次は耐え兼ねて訊きました。
「昨夜何者とも知れず忍び込んで、手文庫の中から手紙の束を盗んで行きました」
「その父上の形見とやらを?」
「いえ、それは袋戸棚に入れてあったので幸い助かりました。盗られたのは、高木銀次郎から私へくれた恋文が七本」
お紋もさすがに極りが悪そうでした。
俯向いてほのかに笑うと、片面が翳って、何ともいえない淋しさが湧きます。
「何で、そんな物を持っていなすった、焼きも捨てもせずに」
と平次。
「万一、高木銀次郎が私を相手に正面から来た時は、あの汚らわしい恋文に物を言わせるつもりでした。頼る者もない女は何かにつけて、用心深くなります」