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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

「一度はやられたが、今度は――」

平次は忙しく袷を引っかけると、部屋の外へ飛出しました。左手には有明の行灯を提げて、曲者の通ったらしい道を、嘗めるように進んで行きます。

「お、ここから入ったのか」

縁側の戸が一枚、物の見事に外されて、そこから点々たる泥足の跡が、平次の寝室まで真っ直ぐに続いているのでした。

「親分、何か見付かりましたか」

お紋と二三人の女中が、恐る恐る廊下を覗いております。

「御新造、不思議な事だらけですよ」

「…………」

「この様子じゃ幻の民五郎は、思いの外甘い野郎かもわかりません」

「まア」

「すぐ捕まりましょう、御安心なさいまし」

平次の声は妙に自信に満ちております。

「どうか、早く捕まえて下さい。あの短刀はざらにある品じゃありません。鞘は三つ葉葵の紋散らしで御公儀に書上げのある品、本多上野介様の御品と判り切っております」

「…………」

「おや、泥足の跡は、入ったのばかりで、出たのがないのはどうしたことでしょう」

「…………」

お紋は妙なことに気が付きました。

「それにこんな大きな足の人間はあるものでしょうか」

「…………」

平次はそれには答えず、その辺中を忙しく見廻しております。