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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁
三十二三の痩せぎすながら見事な恰幅。少し月代が伸びて、青白い顔も凄みですが、身のこなし、眼の配り、何となく尋常ではありません。
浪人者は丸山湯の暖簾を肩で分けて、ヌッと中へ入りました。
「たいそう空いているな」
番台へ一瞥。
「ハ、ハイ」
娘は一ぺんに顫え上がってしまいました。
刀を鞘ごと抜取って、娘に渡そうとして、ハッと気が付いた様子。
「可怪しな娘だ。逃げ腰になって腰の物を受取る奴があるものか、――それにたいそう顫えているではないか」
「…………」
思わず、今入って来た入口の方へ眼を移すと、暖簾の間から、鉢巻、襷といった扮装の人間が、押し重なって覗いているではありませんか。
「おや」
浪人は一度渡しかけた刀を引ったくるように、ピタリと左腰に差しました。プツリと鯉口を切っております。
かくと見た暖簾の外の一隊。
「それッ、気が付いたぞ、取逃すなッ」
「おッ」
職業意識を真っ向に振りかざして、バラバラと土足のまま飛込みました。
「御用」
「神妙にせい」
殺到する十手、捕縄、十五六の肉塊。
「人違いするな、俺は高木銀次郎、縄目を受ける覚えはないぞ」
浪人――高木銀次郎は、飛退くと積んだ小桶を楯に、流しの真ん中に、身構えました。