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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

「ゆっくりお休みなさいまし、――灯は消しておきましょうね。御用があったら、手を鳴らして下さい、私か女中が参りますから」

姉らしく囁くのに、平次は返事もせず、もう鼾をかき始めました。

それから一刻ばかり。

何やら怪しい者、――一朶の黒雲のようなものが、平次の寝室に忍び込みました。鼾も何にも聞えませんが、床の側に這い寄ると、手探りで蒲団を剥いて、闇にもキラリと閃く刃。

平次の胸と覚しきあたりを存分に刺したのです。

音も何にもありませんが、身を翻した曲者は、サッと、闇の中の衣桁へ――。

が衣桁の中には先客があったのです。飛込んで来る曲者を迎えるように、ガバと組付くと、そのままねじ倒して膝の下へ。

曲者は僅かな声をあげましたが、蛇のように身体をくねらせると、平次の腕を抜けてサッと廊下へ、

「己れッ」

何という早い足でしょう。雨戸を一枚蹴開いて、そのまま朧銀の夜の庭へ、怪鳥のごとく飛降りるのを、待ってましたとばかり、下からむずと飛付いたものがあります。

「野郎っ、逃がすものか」

腕力だけは人の二倍もある、ガラッ八こと、わが八五郎が、平次の旨を承けて、宵からそこに待っていたのです。