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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
――それはいいが、遺書と日付との筆蹟が違っているのはどういうわけだ」
「そんな事がどうして解るんだ。本文も日付も、恐ろしく達者な字じゃないか。墨色だって、少しも違やしない」
万七は自分の見込みの引っくり返されるのは、毎々のことながら我慢のならない屈辱だったのです。
「三月四日の月という字を見るがいい、本文のは刻明に二本の横棒を引っ張っているが、日付の方はチョンチョンと点を二つ続けて打っているぜ」
「草と行だ、それくらいの違いはあるだろうよ」
「いや、こんな癖は、草と行の違いくらいじゃ変らないのが本当だ。万七親分、この自害は少し臭いぜ」
平次はそっと囁き加減に言うのです。この手柄は万七に譲ってやっても、事実だけは探究しておきたかったのでしょう。
「そんな事を言うなら、五兵衛の死んでいた部屋を見るがいい。雨戸を閉めたら最後、廊下から入るより外には、入口のないところだ」
万七は先に立って平次を案内します。寮といっても、研屋五兵衛が贅を尽した建築で、入口の右は居間と女中部屋とお勝手と風呂場、左はお糸の部屋で、その先二た間置いて、一番奥が五兵衛の殺された部屋になっております。