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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

三

三

「どうだい八、番頭が物惜しみをしただけに、手が混んでいるじゃないか」

平次は浅黄の手拭を畳の上に拡げました。

「なるほどね、十二支と江戸名所尽しだ」

手拭は一面の模様で、細かく十二に割った区画の中に、十二支の動物や、塔や、橋や、鳥居や、人物が、統一も順序もなく並べてあるのです。

「江戸名所に、鍋鉉や賽ころはないぜ」

それ以上は二人にも判りません。とにかく、最初の一と区画は、塔と飛んでいる動物と、橋の欄干があるだけ。

「こいつは親分、両国橋から見た浅草の五重の塔じゃありませんか」

「飛んでいるのは」

「鳶か何かで」

「鴎なら判っているが、――恐ろしく腰の細い、足の長い鳶じゃないか。まるで蜂か蚊だぜ」

「…………」

「とにかく、この手拭を持って行って、どこで染めたか突き止めてくれ。端っこに印があるから、商売人が見たら判るだろう。紺屋が判ったら、誂主を訊くんだぜ」

「ヘエ」

「それから、正月早々気の毒だが、しばらくの間、あの『さざなみ』を見張っていて貰いたいな。手が足りなかったら、下っ引を狩り出しても構わねえ」

「そんな大物でしょうか、親分」

「博奕宿か、大名の洒落か判らないが、とにかく、お膝元に不似合なものらしいよ」