Japanese reading practice

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

八

「で――?」

「家中の者が皆んな疑われても、お直さんだけには、疑いが掛らないはずです」

「居間に一人で居たのを誰も見た者はない」

「それだけは嘘です、親分さん、――聴いて下さい。お直さんはあの時、裏口で私と愚痴を言っていたんです。御飯の後四半刻ばかり、旦那の事をかれこれ言ったので、申上げ難かったのでしょう、――ねえ、お直さん」

「…………」

お直はうなずきました。一言も口はききませんが、その眼には、感謝らしい光が動きます。

「御飯の後、あの騒ぎのあるまで、私とお直さんは一緒でした。どんな事があっても、お直さんだけは下手人じゃございません」

屹としたお藤の顔、その美しさも格別ですが、人に疑わせるような陰影は微塵もありません。

八

「こいつは驚いた、――外から曲者が入ったはずがなし、家の者であやしいと思ったのが、一人一人無実だとすると、下手人はお前さんより外にないぜ」

ガラッ八の無作法な指が、お藤の胸を真っ直ぐに指しました。

「馬鹿、何と言うことをぬかす。――もう一人、一番怪しいのが居るじゃないか、若旦那を連れて来い」

平次は少し機嫌を損ねております。黙ってうな垂れるお藤――自分の出過ぎた態度を後悔している様子が、いかにもいじらしい姿でした。