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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
六
「存じません」
「旦那によく似ているが――」
「知らねえだよ」
これでは手の付けようがありません。
六
「それじゃ、昨夜とその前の晩、旦那の宗太郎さんはこの家に居たかい」
平次は利助に代って問いかけました。
「居ましたよ。旦那はお金の勘定が好きで、夜更けまで算盤をはじいていますよ」
小僧の吉蔵はこまちゃくれた事を言います。
「お前は見たのか」
「いえ、夜中小用に起きた時、旦那の部屋に灯の点いているのを見ただけです」
「話声は聞かなかったか」
「否」
平次の問もそこで行詰りました。
「旦那は夜更けにお前達を部屋へ入れないのか」
「ヘエ――、金の勘定などを奉公人は見るものじゃないって叱られます。戌刻半(午後九時)から先は旦那の部屋へ行かないことにしているんです」
「それで、算盤を弾いているんだね」
「ヘエ、昨夜もその前の晩も、亥刻から夜中過ぎまで、引っ切りなしに算盤の音がして、うるさくて、眠られませんでしたよ」
生意気そうな小僧の吉蔵は、恐れ入った宗太郎を顧みます。
「それでいい。悧巧そうな小僧さんだ、どりゃ」
平次はもう一度立って離屋を覗きました。手文庫と、手習机ほどの机が一つ、帳面が五六冊、それを繰って見ると、ところどころ筆跡は違っていますが、宗太郎はかなり手広く金を貸して、近頃は取立てる方に力を集注している様子までよくわかります