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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

四

「小田巻直次郎、これでも武士だ。辻斬や剽盗に朋友も知己もない、――さア、踏込んで見ぬか。怪しい者は居ない代り、金はうんとあるぞ。小判というものを堪能するほど拝ましてやる。それ」

押入を開けると、中から重そうに引出したのは、手頃の風呂敷、その小口を解くと、

「あッ」

さすがの平次も仰天しました。小判、小粒取交ぜて、どう少なく踏んでも、五六百両はあるでしょう。

「これで道場を建てて、小田巻流を江戸中に拡めるのだ。よく拝んで行け。大きな顔をしても、そちなどには、これほどの大金を夢にも見たことはあるまい」

「…………」

「あとは雪隠だ、よく見ろ」

行灯を片手に、ヨロヨロと立った小田巻直次郎。ツイ鼻の先の便所の引手を掴んでサッと開けました。

中は空っぽ。

四

平次とガラッ八は、旅籠町の路地を、這々の体で引揚げました。腕に覚えの小田巻直次郎が、家の中を見せた揚句、本気になって引っこ抜きをやったのですから、その上突っ込んで調べようはなかったのです。

「親分、とんだ見当違いでしたね」

ガラッ八は往来へ出てようやく胸を撫で下ろします。

「何が?」

「曲者が逃げ込んだのは、もう一二軒先だったかも知れませんよ」