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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
四
「それは――」
「知らねえとは言わさねえよ。とにかく、番所へ来あがれ。旦那衆のお調べを願ってやる」
真砂町の喜三郎は、功名に陶酔した心持で、ピシリと縄尻を鳴らしました。まだ三十台の売出し盛り、ツイ功名を急ぎ過ぎる癖はありますが、この稼業の者にしては、物のよく解った男だったのです。
四
「親分、あれを聞きなすったかい」
「なんだ、八」
「お駒が殺されたって話――」
「そうだってネ、可哀想に。房五郎は憎い男だがお駒は気の毒さ。もっとも、あんなに綺麗じゃ随分殺したい者も多勢あったろうが」
捕物の名人で、江戸開府以来と言われた御用聞、銭形平次は、子分のガラッ八こと、八五郎を迎えていつにもなくこうしんみりしました。
「それがあべこべなんで、親分」
「何があべこべだ」
「憎いのはお駒で、可哀想なのは房五郎だ――という町内の評判ですぜ」
「ハテね」
「お駒の阿魔は、二年越し言い交した、版木屋の新吉を振り捨てて、越後屋の辰之助を、持参金三百両で聟にすることになったんで、新吉はカッとなって、仕事場から切出しを持って来て殺っつけたんだそうですよ。親父の房五郎は大病人同様、今日は枕も上がらねえ騒ぎだ」