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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

五

「それはもう、双生児の男同士で、子供の時は親父にまでよく間違えられました。年を取ると次第に気性が違って来たのと、弟は身体が丈夫で、顔色も艶々しておりましたから、家の者に間違えられるような事はありません」

「暗がりで、ヒョイと他人が見たら――」

「それなら、私と弟と間違えても不思議はありません」

「有難う、それで大方解った」

「それでは親分さん、何分宜しくお願い申します。悪い奴でも、肉身の弟に変りはございません、決して処刑に上げたいわけではないのですが――」

五

その晩は雪、ツイ油断をしていると、平右衛門町の隠居泉屋の老夫婦が、離屋の中で殺され、有金五六百両が紛失しておりました。これが、泉屋へ祟った曲者の最後の仕事でしょう。お品のところから通知があると、

「それ行け、――八」

ガラッ八と一緒に駆け出した平次は、いきなり途中から道を変えて、鳥越の方へ外れます。

「親分、どこへ?」

「俺はちょいと信心をして行く。手前は現場へ真っ直ぐに行くがいい」

「ヘエ――」

何の信心だか解りませんが、ガラッ八は雪を踏立てて、平右衛門町へ飛びました。

平次はその後ろ姿を見送りながら、鳥越の笹屋の裏路地へ、そっと潜るように入り込んだのです。