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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

六

「八、八は居ないか」

「親分」

ノソリと物蔭から出たのはガラッ八です。

「あの二人の虚無僧の後を跟けてくれ」

「ヘエ――」

ガラッ八は猟犬のように、尻を七三に引っからげて飛出します。

六

二た刻ばかり後、今日一日の店を仕舞い、借りた物は返し、傭った人には手当をやっているところへ、ガラッ八の八五郎は濡れ鼠のようになって飛込んで来ました。

「あッ、ブルブル。あの若い虚無僧の腕には驚きましたよ、親分」

「ちょっかいを出して、大川へでも投り込まれたんだろう」

平次は案外驚いた顔もしません。

「ちょっかいなんか出せるものですか。神妙に後を跟けて行くと、亀戸へ行って、深川へ廻って、それから永代を渡ってまたこっちへ戻るじゃありませんか」

「どんな家を訪ねて廻ったんだ」

「どこへも行きゃしません。天神様へお詣りして、落書を一と亙り読んで、矢立を出して柵へなんか書いて、八幡様へ行って同じことをして、それから永代橋の欄干の裏へなんか細工をして」

「フーム」

平次の顔は次第に真剣になります。

「立去った後、その欄干の下をヒョイと覗くと、いきなり若い虚無僧が戻って来て、先刻から我々両名の後を跟けているようだ。