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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

四

「親分、それじゃ帰りましょう」

八五郎はションボリ立上がりました。

「なんだ、これから塒へ帰る積りかえ。泊って行くがいい、もう亥刻(十時)過ぎだろう」

「ヘエ」

そういう平次の調子には、漸く温か味が蘇ります。

「美い月だが、少し寒いぜ」

四

翌る日の朝。

「さア、起きた、八」

「あ、親分」

ガラッ八が眼を覚すと、枕元にはすっかり仕度をした平次が立っていたのです。

「大急ぎで仕度をしろ、鎌倉町まで明け切らないうちに行くんだ」

「行って下さるんですか、親分」

「当り前よ」

「昨夜の話は?」

「人が聴いていたんだ」

「えッ」

「手前が、御丁寧にも麻布から馬を引いて来たんだよ。御用聞が人に後を跟けられて知らずにいるなんざ、あんまり褒めたことじゃねえぜ」

「ヘエ――」

ガラッ八の八五郎、全く開いた口が塞がりません。

「手前の後を跟けて来て、勝手口の方から裏へ廻った奴があるから、月を眺めるような顔をして、縁側から覗くと、戸袋の隠から、刀の小尻が二本」

「ヘエ――」

「だから、ポンポン言ってやったのさ。――殺したのは大名屋敷の者でも、殺されたのは――大名の跡取りだか何だか知らねえが、洗ってみれば町人の子だ、――行ってみようぜ、八」