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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
八
「…………」
「旦那、これで間違いはないんでしょうか」
平次は静かに語り終るのでした。その場の情景を見たような話し振りです。
「そのとおりだよ、平次」
静かに応ずる良右衛門。
「ヘエ――」
「よくも捜った。――さすがは銭形の親分、恐れ入ったよ。――私はもう覚悟を決めている。逃げも隠れもするわけではない」
石川良右衛門はそう言いながら、一刀を取上げました。
「待って下さい、旦那、研屋五兵衛を殺さなければならなかったわけ、それを承りましょう」
平次は良右衛門の覚悟の手を止めます。
八
石川良右衛門は、研屋五兵衛の懇望のまま諸大名はいうまでもなく、公儀の御用までも取次ぎ、この十年の間に、めっきり研屋の暖簾をよくしてやりましたが、五兵衛は女道楽と勝負事が好きで、最近二三年の間に、さしもの身上をすっかりいけなくしてしまったのでした。
御腰物方から、東照宮伝来の佩刀を頼まれたのは去年の夏、五兵衛に拵えを直させて、石川良右衛門の家へ持って来ると、ある夜泥棒が入って、それを奪られてしまいました。
良右衛門の驚きは言うまでもありません。さっそく五兵衛に相談すると、偽物を作ってともかくも一時は凌ぎ、そのうちにゆるゆる真物の行方を捜し、金に飽かして買い戻すより外に途はあるまいということになり、五兵衛はさっそく偽物を拵え上げ、鞘から鍔まで