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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
「これで見ると、十日と読ませるには、塔の蚊を画いている手拭の模様の最初のがそれだ。手前は観音様の五重塔と鳶だと言ったが、あれは蚊だったよ、八」
「なるほどね、道理で無闇に足が長いと思った」
「手拭の模様は十二に分けてあったから、最初は正月とみていい、正月の十日というと今日だ」
「…………」
妙な緊張に、ガラッ八は唇を嘗めました。
「両国橋の近くに、何かあるに違いない、――どうだ八、この絵解きは面白かろう」
平次はこんな事を言って落着いているのです。
「それじゃ行きましょう、親分、十日の日もあと一刻で暮れますぜ」
「その暮れるのを待っているんだ」
「風をくらって逃げたら?」
「大丈夫。お品さんが、利助兄哥の子分衆に言い付けて、両国の橋の見えるところで、二階正面の障子が一枚、裏返しになっている家を、朝っから見張っているはずだ」
「ヘエ――」
ガラッ八は喫驚しました。五日籠っていた平次の神算鬼謀が、日本中の大泥棒の巣を、叩き潰すまでに運んでいたのです。
*
その晩、両国の料理屋、鶴喜の離屋を借りて、年に一度の参会を開いていた道具屋の一隊は、石原の利助の子分を先鋒とする、八丁堀の組子に十重二十重に取囲まれ、多勢の怪我人まで拵えて、尽く召捕りになりました。