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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

良助は首筋を掻きました。小作りのキリリとした身体や、整った眼鼻立は、なるほど女形に向きそうですが、稼業のことはあまり言いたくない様子です。

「遊び人ですよ、親分」

ガラッ八は囁きました。なるほどそういえば、堅気の人間らしくはありません。

「手前は黙っていろ、――本人に言わせたいんだ」

「ヘエ――」

平次に極めつけられて、ガラッ八は一と縮みに縮んでしまいました。

「大層山へ来るのが遅れたそうじゃないか、家から使いの者でも来たのか」

と平次。

「それが不思議なんで、親分、油屋さんと同じような具合に、田圃から三河島へ抜けようとすると、後ろから追っかけて来た見知らぬ小僧が、家に用事があるから、ちょいと戻ってくれと、こう言うじゃありませんか。――おやと思うと、もう小僧の姿も見えません。ともかく馬道の長屋まで戻ると、家はあっしが出た時のままで、何の変りもありません。まるで狐につままれたような心持で、引返して山へ来ると、この騒ぎです」

良助の話には仕方が入ります。

「馬道の家には誰が居るんだい」

「独り者で、生憎誰も居りません」

「お前が帰ったのを見た者はないわけだな」

「ヘエ――」