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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
銭形平次捕物控
一
一
「平次、頼みがあるが、訊いてくれるか」
南町奉行配下の吟味与力筆頭笹野新三郎は、自分の役宅に呼び付けた、銭形の平次にこう言うのでした。
「ヘエ、――旦那のおっしゃることなら、否を申す私ではございませんが」
平次は縁側に踞ったまま、岡っ引とも見えぬ、秀麗な顔を挙げました。笹野新三郎には、重々世話になっている平次、今さら頼むも頼まれるもない間柄だったのです。
「南の御奉行が、事をわけてのお頼みだ、――お前も聞いたであろう、深川木場の甲州屋万兵衛が今朝人手に掛って死んだという話を――」
「ツイ今しがた、溜にいる八五郎から耳打をされました。あの辺は洲崎の金六が縄張で――」
「それも承知で頼みたい。――甲州屋万兵衛は町人ながら御奉行とは別懇の間柄、一日も早く下手人を挙げたいとおっしゃる――金六は一生懸命だが、何分にも老人で、届かぬ事もあろう、すぐ行ってくれ」
「畏まりました」
吟味与力に頼まれては、嫌も応もありません。平次は不本意ながら、大先輩洲崎の金六と手柄争いをする積りで、木場まで行かなければならなかったのです。
「八、手前が行くと目立っていけねえ、神田へ帰るがいい」