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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
「番頭が帰ったようだぜ」
「あれが泥棒だったら?」
伊三松はまだほんの少しばかり職業意識があります。
「小僧が臆病窓を開けて、顔を見てから入れた様子だ、――第一あの泉屋と書いた提灯が物を言わア」
ガラッ八はすっかり好い心持そうです。
が、まもなく泉屋の中は、煮えくり返るような騒ぎが始まりました。
「泥、泥棒ッ」
夜の街を筒抜けに、小僧の金切声。
「それッ」
ガラッ八と伊三松は酔も興も醒めて、驀地に泉屋の店口に飛び付きます。
内からサッと開く戸、中は真っ暗。
「御用ッ」
真っ先に飛込んだ伊三松の十手は、曲者の脇差に叩き落されました。
「神妙にせい」
続くガラッ八は、曲者の背後から、ガッキと羽掻締めに組付きます。
「灯、灯」
誰やらの声が甲走ると、気のきいたのが、奥から手燭を持って来ました。
淡い灯が一と打、帯ほどの幅で射すと、曲者は脇差を逆手に、ガラッ八の腹のあたりを突いて来ます。
「糞でも喰えッ」
ガラッ八は片手を抜いて、その利き腕を掴みました。御用聞中の無双の強力、曲者も早業を封じられて、さすがに、閉口した様子です。
「え――ッ」
激しい気合と共に、曲者の身体はガラッ八の腕を脱けました。