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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

「俺は一日も早く、お品さんの前に、正体を見せたかったのさ。お品さんというものがなきゃ、もう半歳辛棒して、期限になった貸金をかき集めると、三四千両は手に入れられたんだ」

「…………」

「が、お品さんに見られたら、跛者やしわん棒や、臆病者の真似をしているのは、辛かったぜ」

宗次は自分の英雄的な姿を誇るように、漕ぐ手を休めては時々お品の前に立ち上がるのでした。

「おやッ」

同じ灯の無い船が、ヒタヒタと前から迫ります。

「変な船が来るぜ」

それが平次と利助の船だったことは、言うまでもありません。

「宗次、御用だぞ」

「何をッ」

闇を裂く平次の声を聞くと、宗次は縛ったままのお品を抱いて立ち上がりました。

「悪党らしくもない、お縄を頂戴せい」

宗次は逃れようのないことをはっきり知りました。後ろからは伊三松の船、向うからガラッ八の船が、これは灯を滅茶滅茶に点けて、篝船ほど川面を照らしながら、

「御用ッ」

「神妙にせい」

と漕ぎ寄せるので、その人数はざっと二三十人。

「ハッハッハッ、手が廻ったのか。少し油断が過ぎたかも知れぬて、――が思い置くことはない、お品さんと一緒だ、晴れの心中も洒落ているだろう」