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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

「俺には大抵判っているよ、――ところで、昨日の夜の騒ぎの中で、誰か居ない者のあるのに気が付かなかったかえ」

「みんな居ましたよ」

「そんな事はないはずだが」

「父さんは宵寝だし、兄さんは銭湯へ行ったきりだし、捨さんは風邪の気味で夕方から床へ入ったし」

「小堀家の武家が押込んだ時は?」

「みんな居ましたよ、兄さんが仕舞湯から帰ったところを捕まっただけで――」

「みんな一緒に押し込められたんだね」

「最初は捨さんだけ別の部屋でしたよ」

「フーム」

「だって奥の部屋へ一人で寝ていたんですもの」

こんな話からは、何にも引出せそうもありません。

ちょうどその時、路地を入って来た武家が一人。

「御免、平次殿は御在宅か。拙者は小堀和泉守家中、桑原伊織――」

真っ直ぐに名乗るのが、筒抜けに聴えます。

平次はお徳を女房のお静に預けて、ガラッ八が案内して来た武家と相対しました。

「下手人を出さなければ、本日正午の刻、龍の口評定所へ訴え出るという強談じゃ。――主家の安危には替え難い、拙者いさぎよく名乗って出ようと思う。主殺しの汚名を、万代の後まで流すのもまた致し方がない。二品の紛失と若様毒害を言い立てられては、小堀家が危ない」