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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

六

「知っていて、あんな目に逢わせるのは殺生だぜ、親分」

「まさか斬りもしないだろうと思ったが――考えてみると危なかったよ。河内屋の跡取はお富と決って、明日は乗込むそうだから、姉のお米が貧乏籤を引いて、一生飲代にも困るとなると、馬場要の猩々斎だって面白くないだろう」

「それまで解っていたんで、親分」

「あの騒ぎのお蔭で、俺は裏口の方をよく見て来たよ。さア帰ろう、これでだんだん眼鼻が付く。白粉の濃い、首に傷のある女さえ見付かれば――」

平次はそう言いながら、家路を辿るのでした。

六

平次はしかし、恐ろしい勘定違いをしました。その晩、悪魔は最後的な大飛躍を遂げて、世にも惨虐なことをしてのけたのです。

「親分」

朝の光と一緒に飛込んだガラッ八。

「何だ八」

唯事ならぬ様子に、平次も飛起きました。

「た、大変だッ、――丁子屋のお富が――」

「しまったッ、――殺されたか」

平次ももう事の成行を読んだ様子です。

「あっしの家は丁子屋の近所だ。小僧が来て叩き起すから、行ってみると、お富は自分の部屋で、刺されて死んでいるじゃありませんか。血の海の中に、真っ白に浮いたお富の顔の、凄いと言おうか、美しいと言おうか」