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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
私は捕物小説を書き始めた頃、時々翻案ではないかという疑いを受けた。評論家の高田某、作家の奥村君はその代表的な人達であった。奥村五十嵐君は、後に捕物小説を書くようになってから「いや済まないことした、あれは翻案などであるべきはずはない」と素直に詫びてくれたが、惜しいことに五年前に世を早くした。
捕物又は探偵小説に種本は無い。それは筋やトリックを生命としているからである。古典文学に、こういった物語の粉本の少ないのは、背景になる社会生活が単純で、人々はことごとく割り切った暮らしをしていたためであろう。
もっとも旧約時代のソロモンの伝説が、大岡政談に採り用いられた例もあり、仏説にも『古事記』以後の史書にも、淡い探偵的な話はある。謡曲の「草紙洗」は唯一の探偵物語であるが浄瑠璃には非常に夥しい。忠臣蔵の勘平などは、なかなかの探偵劇だといってよい――だが、そんなものは一つも利用されるものではない。
中国には、詐術又は裁判小説は夥しく、『棠蔭比事』などはその代表的なものだが、私はその中のトリックを逆に用いた例はある。もっとも盗用と思われるのが厭で、出所は明らかにしてあるはずである。