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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
「ヘエ、――それじゃこうお出でなさいまし」
平次とガラッ八は、庄八と甚助に案内されて、廊下続きの裏の離屋へ行きました。
が、縁側をグルリと廻ると、多勢の足音に驚いた様子で、障子を中から開けて、パッと飛出した者があります。
「あ、若旦那」
声を掛ける庄八を突き飛ばすように、
「庄八、甚助、お前達は、寄ってたかってお糸を泥棒にする気かい」
屹となったのは、二十一二の、典型的な大店の若旦那です。言うまでもなく玉屋の一人息子の金五郎、今までお糸を慰めていたのでしょう。
「とんでもない、若旦那」
「いいよ、解ったよ。お前達が、それほどお糸を目の敵にするなら、俺がこの家を出て行くか、お前達に身を退いて貰うか、どっちかにするから」
「若旦那、そんなわけじゃございません。現に銭形の親分さんも、お糸さんに怪しい事はないとおっしゃったばかりで――」
庄八にそう言われると、金五郎は始めて気の付いた様子で、
「あ、銭形の親分、助けて下さい、――こやつらが企らんで、お糸を殺してしまいます」
いきなり平次に飛付きました。我儘息子らしい激情が、一ぺんに爆発したのでしょう。
平次は静かに宥めながら、金五郎が今出て来た離屋へ入って行きました。