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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
遊び人、手代、隠居、安用人、仲間、――と、それぞれの身扮が、素人が見ては、岡っ引の変装とは思えぬほど、手に入ったものですが、夜と共に、外神田中を歩き廻って、もう七日あまり、ろくな犬にも吠えられなかったのでした。
その間、不思議なことに、三日の日限を切って、研屋あさりに出かけた、ガラッ八からも何の便りもありません。
平次はしかし、根気よく続けました。近頃は斬った死骸の懐中物まで抜く、夜盗に等しい辻斬の所業は、平次の職業意識を、一日毎にかき立てて行くのです。
「親分、どこの研屋も、血刀なんか引受けた覚えはないって言いますよ」
ガラッ八がぼんやり帰って来たのは、八日目の朝でした。
「表から十手なんか突っ張らかして、開き直って訊いて歩いたんだろう」
「ヘエ――」
「馬鹿野郎、誰がそんな事をヌケヌケ御用聞に言うものか。――いずれ曰くのある腰の物を引受けるのは、筋の通らない小さい研屋に決っているんだ。奉公人か何か呼出してよ、定めの研賃の倍も三層倍も取ったのはないか――そいつを訊き出して来るがいい」
「ヘエ――」
「もう一度、町内から廻って来やがれ」
「ヘエ――」
ガラッ八はすごすごと立上がりました。