Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
その頃の身内は二百七十人からあったっけ、それが今じゃ形なしだ。
おきぬ 当世は人間が狡ッ辛いからねえ。どいつもこいつも羽振りのいい奴の襟許へつくのだよ。
三蔵 その中で俺だけは、親分の恩を忘れず、たった一人取り残されても、この土地に獅咬みついていた。――その効もなく、今夜は逃げ出さざならねえ。
おきぬ お前さん。奴等もう来る頃じゃないかね。
三蔵 たった一人の俺の寝首を掻くのに、きのうから評定をしてやがったあいつ等だ。早目に押かけることはねえ、四ツが合図だというからまだ大丈夫だ。
おきぬ 二百七十人もいた身内の中で、最後まで踏ン張ったのが、お前さん一人とは、中ノ川一家の末路はひどかったねえ。
三蔵 なあに、この儘でいるものか。一時は長え草鞋をはいても、いつかはこの土地へ取って返し、縄張りを切り拓いて俺の天下をつくってみせらあ。さあ、行こう。
おきぬ (小さな荷物を持って)あい。
三蔵 泣いてるのか。(脇を向いて涙をのみ)人間は七転び八起きだよ。
おきぬ ご覧よ。子供は仏さまだねえ。何も知らずにすやすや寝ているよ。
三蔵 うむ、よく寝てやがる。住み慣れた土地を後に、行衛の定まらねえ旅に出る親たちとも知らず、あどけねえ顔をして寝ているなあ。