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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
さあ、油を売ってたようで外聞が悪い。俺もハネ出し物を三番の筏へ寄せに行こう。手前も早く二番堀の仕事に行け。
金造 じゃあ、今夜、俺と二人でゆっくり、話をするって約束をしてくんな。
政吉 うむ、いいとも。
金造 屹とだな。さっきだっておさんさんは、いつもの通りお前の顔を見に来たんだ。それだのに疑っちゃ可哀そうだ。
政吉 あいつ来たのか――俺に口一つ聞かねえで帰ったんだな。
金造 そりゃ、みんなが居たから、気まりを悪がって帰ったんだ。
政吉 どうでもいいや。
金造 じゃあ帰りにゃ一緒に行こう。
政吉 うむ。(仕事にかかる気で鳶口棹をとる)
金造 (心配しつつ去る)
政吉 (仕事にかかる気になれず、考え沈んでいる。水揚げの掛け声が聞える)ええい。どうでもいいやい。
おさん (木挽の枠の方にそっと来ている。声をかける勇気がなく、躊躇している)
政吉 おさんじゃねえか。
おさん あ、政さん。(政吉の傍へは来たが眼に射すくめられ地に膝をつく)
政吉 (鳶口棹を地に突き立て、おさんを睨み下して)俺のところへ来い――厭とはいわさねえぞ。
おさん (覚悟すべき時がいよいよ来たのを知っている)ええ、行きます。