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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
それで俺あ、やって来たんだ。
おむら 先程は済みません、ツイ気が立っていて言葉も荒く、悪いことばかりいいましたが。
忠太郎 そう云われると返事に困らあ。半次、こうなったらここに居たら身が詰る。逃げる先がお前あるのか。先刻までの俺だったら、一緒にまた高飛びの、股旅かけた草鞋を穿けと、いうところだが左様はいわねえ、お袋さん、何とか法がござんすか。
おむら はい。常陸の叔父のところへ、今夜の中にも旅立たせます。
忠太郎 その手筈はついているのでござんすか。
おむら はい。
忠太郎 そう聞けば安心でござんす。半次気をつけて行け、な。
半次郎 哥児。俺は叔父の処へ行くからいいが。お前は。
忠太郎 俺か――どこへ行くものか、江戸へさ。
半次郎 江戸といってお前、おッかさんの居どころが判ったのか。
忠太郎 確かじゃねえが、噂で聞いた。半次、心配してくれるな。初めて逢う母親が、いると思えば江戸へ行く俺の心は勇んでるぜ。なあに、途中で飯岡方に出くわしても、親に逢うまでは命は大事だ、たとえ卑怯な真似をしても、邪魔する奴は叩ッ斬るよ。
おぬい 聞けば聞く程、お気の毒な。
おむら こんなにまで母親を、慕っているのをおッかさんが聞いたら、さぞかしお喜びだろう。