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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
おさん そんなら政さん、お前さんがあたしだったらどうおしだ。
政吉 命がけで守らあ。いつでもいうことだが、一人ぽっちの俺を、寝ざめにも忘れねえとお前のいう言葉が嘘でなけりゃ命がけで身を守らあ。何故その場で相手の野郎を殺さねえ、そうして身を守ってくれたのなら、俺あどんなに泣いて喜んだか知れやしねえ。
おさん そう考えるのは男の邪慳だ。女じゃそうは考えつかず、出来もしやしないんだ。
政吉 そんなら何故、死なねえんだ。他人の垢を浴びた体で、のめのめと俺に近づいた、その料簡が俺あ憎い。憎いよりは悲しくなる。
おさん 死のうとはその時から考えついていたんだけれど。
政吉 じゃあ何故、死なねえんだ。
おさん だって――お前さんにあたしあ、――未練があって死ねないんだ。(泣き伏す)
政吉 (よきを擲ち、おさんを見詰める)
金造 (空家の前を過ぎ――政吉の家の戸を開けんとする、到底開かずと見て――空家へはいり、隣へ入る口はなきかと、うろうろする)
政吉 俺あいい過ぎた、自分のことばかり考えていて、お前の身にはちっともならずにいた。悪かった。
おさん 憎しみが少しはとれておくれかえ。