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まぶたのはは

長谷川伸傑作選 瞼の母

長谷川 伸

Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens

Aozora Bunko

文太郎 (作蔵に)若い衆。ここは行き止まりじゃなかったな。

作蔵  土蔵について廻れば筏橋へ出ますよ。やあ、だれかと思ったら文太郎さんか。

文太郎 何だお前か、すっかり大きくなったな。俺あきのうこっちへ来たんだ。去年、親の石碑もでかいのを建立したしするので、来ようとは思いながら御用が多くてつい延々さ。今度やっとこさと法事に出掛けてきて、東山の大雄寺下の勘兵衛の家に当分いるから遊びに来な、江戸の繁昌を話して聞かせてやらあ。

作蔵  その内におとっさんがいいと云ったら遊びに行こう。

文太郎 ふうむ。まだ独りで出歩きは出来ねえのか。(お松と顔を見合せ、冷笑して)田舎者はだから厭だ。

作蔵  田舎者でもいいさ。江戸ではどうか知らないが、高山ではよく云わない人のところだから、親に黙って遊びには行かれないよ。

文太郎 ふん。儘にしろい。(お松に)おう、馬鹿面を見てても始らねえ、行こう。

お松  田舎の人って割に口が悪い上に、ものを知らないのだねえ。あたしが鼻っ先に立っているのに、挨拶一つしないでさ、しかもジロジロ見ているくせにさ。呆れたねえ。

文太郎 まあいいやな。相手は朴念人だ。