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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
おなか わたし達二人も、添われぬ縁の悲しさに、一度は死ぬ気になりましたが、生きていてこそと心が変り、お恥しいこの有様で、知らぬ他国をうろつきます。あなたは想う人に死に別れ、わたし達は二人揃っているとはいえ、雨も風も邪慳に当り、泣き合う日もございます。
政吉 云って悪いか知れねえが、憂いも辛いも二人なら、泣きの涙のその中にも楽しみみていなものもあろう、それを力に病わねえよう、気をつけてお行きなさい。永くいたら迷いが却って深くなる。(財布から銭を出し)ほんの少しでお恥かしいが、草鞋二足はこれで買えます。さ、取っておくんなさい。
おなか 有難う存じます。(胡弓をとり直す)
政吉 もし、唄なら聞くまい、ひょっとして、この上、悲しくなっては怺えられねえ。
おなか でも、おあしを戴きましたから、面白くもない唄ですけれど。
政吉 縁があってまた逢ったら、お二人揃っている時に聞かせてお貰い申します。
おなか (頭を下げて銭を仕舞う)
政吉 (未練を深く持ち、立ち去りかねている)
徳之助 (狼狽して駈け来たり)ああおなか。さあ逃げるのだ。(後を振り返り)悪い奴に出会ってしまった。