Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

まぶたのはは

長谷川伸傑作選 瞼の母

長谷川 伸

Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens

Aozora Bunko

茂兵衛 お約束を無にいたし、こんな者に成り果てまして、お目通りはいたさねえ筈でござんしたが、十年振りでこっちの方へ、流れてきたので思い出して、他所ながらお尋ねしてえと、きょう小半日うろついて、それでも判らずにおりましたが、飲み屋の女が唄う鼻唄から気がついて、聞いてみたら女飴屋の口真似だとか、それを手蔓に方々聞き、ここへ来てみると子供の声で、昔聞いた節の唄、お蔦さん茂兵衛はモノに成り損ねましたが、ご恩返しの真似事がいたしてえ。お納めを願います。(手早く金包を置いて)ご縁次第、又お目にかかります。ご免なさんせ。(帰りかける)

お蔦  あ、待ってください。

辰三郎 (お蔦に)知らない人なのか。

お蔦  ああ、憶えがないんだ。

茂兵衛 思い出されねえのは却って仕合せでござんす、あ奴かとわかっては面目ねえ。立退くなら早いがいい。事によったら一里ばかりは。ご免なさんせ。(戸を開けて出て行く)

お蔦  だれだろう。

辰三郎 お君の唄を聞いたといったが、国の知った人ではないのか。

お蔦  いいえ、違う。判らないもの仕様がない。地獄で仏とはこのことかしら。頂いたこのお金があるから、旅へ出ても苦労はない。